第2章 白雪姫とシンデレラ

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シンデレラは酔った男の怒鳴り声から一瞬で広まったこの騒ぎの中心にいるのが、その罵声の内容で自分に会いに来てくれた継母と姉二人である事はすぐにわかった。 隣にいる王妃と白雪姫の声さえよく聞こえないこの状況……大きな声を出すことが苦手なシンデレラ。 それでも渾身の力を腹に込め必死に大声を張り上げた。 「ち、違う!! やめて!! お継母さんもお姉ちゃん達もそんな事しない!! ひどい事しないで!! 私の話を聞いて!!」 シンデレラは何度も何度も声を張り上げた。 だが、そのすべては負の一丸となった群衆に掻き消されて届かない。 それでもシンデレラは諦めなかった。 人の壁で家族の姿は見えないがこの先にいるのだ。 囲まれて怒鳴られて、きっと震えて泣いている。 「声が届かないなら、私がそこまで行く!」 シンデレラは口を真一文字に結び、腕をまくり目の前の人の壁を崩しにかかった。 「どいて! 通して! 家族が泣いてるの! 私が助けに行くの!」 たくさんの知らない背中の塊に、細い腕を突っ込み掻き分けようと力を込めた。 だが女の力ではその壁を割る事が出来ず、反対に振り払われ派手に転んでしまった。 「痛っ……」 倒れた時に敷き詰められたレンガで擦ってしまったのか、手首から手の平にかけて大きく皮が剥け血が滲んでいる。 シンデレラはその傷を一瞥しただけで、すぐに立ち上がると再び人の壁に腕を入れようとした、その時。     
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