第2章 白雪姫とシンデレラ

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「オッケィィィィィ!! その言葉を待ってたぁぁぁ!! ついてきな!! 私が中心まで連れてってやる!! しかも一分でなっ!!」 野太い声で『1分以内の突破』を宣言する白雪姫。 彼女は、野球に例えるなら九回の裏、最終打席で予告ホームランをするバッターに似たプレッシャーをあえて自分に課す事で実力の三倍の力を発揮するタイプなのだ。 白雪姫は宣言後、このクソ寒い真冬の夜にコートを脱ぎ払うと、黒いタンクトップに軍パンツだけの軽装になった。 「見てるだけで、体感温度が三度下がるわ……」 王妃は娘の姿にコートの襟を立て身震いをした。 白雪姫は寒さを感じないのか、軽い動きでストレッチを始めた。 両肩の固く締まった筋肉は鋼のショルダーパッドの役目を果たし、上腕二頭筋は鉄パイプを何本も束ね合わせたような豪腕さが頼もしい。 その見事な仕上がりの身体をあっちに捻りこっちに捻り、短時間で体を温めた白雪姫はシンデレラの手を握り自分の後ろにつかせた。 「いい? 絶対にこの手を離さないで。じゃあ、行くよ!!」   白雪姫はシンデレラを背中で守り、 「十戒だぁぁぁぁぁ!!」 と、雄叫びを上げながら、人と人の間に丸太のような腕を突っ込んでいった。
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