第2章 白雪姫とシンデレラ

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勢いだけではない、町の人達にケガをさせないようにと冷静さを保ちつつ、器用かつ強引に掻き分け、少し開いた隙間に自前のショルダーパッドを捻じ込んではすごい速さで前進していった。 「す、すごい……!」 シンデレラは自分がまったく崩す事のできなかった人の壁を、簡単に切り開いていく白雪姫と、その壁の中で飛び交う罵声の数々に眩暈を起こしながらも、自分を助けてくれる大切な友人の手を握りしめ必死について行った。 宣言通り、分厚い人の鉄壁を五十八秒で突破した白雪姫とシンデレラは、目の前の信じられない光景に安堵する間もなく絶句した。 そこには負の感情に支配された群衆に囲まれ、逃げ場を無くした継母と姉達の三人が、ガタガタと身体を震わせ固く抱き合いしゃがみこんでいたのだ。 三人は久しぶりに会うシンデレラの為に精一杯身綺麗にしてきたであろう、その服も髪も揉みくちゃにされ、傍らには潰れたクリスマスプレゼントの箱が三つ転がっていた。 そしてその母娘を守るように両手を広げ睨みを効かせているフェアリーゴッドマザーの赤いコートも泥に汚れ、結ってあった髪がボロボロにほどけていた。 シンデレラは白雪姫の手を離すと、恐怖に震える家族の元に駆け寄りしがみついた。 目深にかぶったフードのせいで、それがシンデレラだとは気が付いていない群衆が新たな怒りを爆発させた。 「誰だ、おまえは! この町の恥さらし母娘を庇うのか!?」     
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