第2章 白雪姫とシンデレラ

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群衆のヒートアップは留まるどころか更に上昇していった。 誰かの怒声が誰かの感情を負の方向に引っ張ると、引っ張られた誰かがまた怒声を上げる。 その繰り返しが連鎖を生み、やがて収集のつかない事態を作り上げていく。 元はと言えば些細な噂話から始まった。 家族に喜ばれたい一心で家事を頑張っていたシンデレラ。 真実をろくに確かめもしないで軽い気持ちで噂を流した近隣住民。 舞踏会で王子様に見染められた美しすぎる町娘。 娘の幸せを願い事実無根の噂話に沈黙する継母達。 どれか1つでも欠けていたらこんな事にならなかったのかもしれない。 暴走寸前の群衆の中で、特に荒れていたのは町の若い男達だった。 彼らは昔、美しいシンデレラに淡い恋心を抱いていたが、この国の王子様と結婚し手の届かない存在になった彼女を泣く泣く諦め、かわりに神格化し女神として崇拝するようになっていた。 そんなシンデレラを苦しめたとされる継母達に対する憎しみが、群衆心理を燃料に今夜一気に燃え上ってしまった。 その負のエネルギーは自然と暴力という手段へと向かう。     
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