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地面に蹲る王妃。
その脳裏には、この一年血の滲むような努力で大量の専門書を読み、理解し、その知識を駆使して最強の毒薬を作り上げるまでの苦行のような日々が走馬灯のように浮かんでは消えていった。
____辛かった、大変だった、……それなのに、私は何の為にこの一年間頑張ってきたのだろう……!
白雪姫を殺し自分が美の世界一に返り咲く為ではなかったのか……!
それが……それが何という事なの!
思い返して血が滲む程唇を噛む、そんな王妃に男が心配そうに駆け寄ると、
「もしかして具合が悪いのですか? 良かったらお水を持ってきましょうか、」
と、ガラス細工の鈴の音のような澄んだ声をかけてきた。
ああ……と、王妃は力なく顔を上げ、鈴の音の主をまじまじと見た。
礼儀も作法もクソ食らえ、失礼な程に凝視をした後、一つの答えに辿り着く。
____やっぱりそうだ……この声……喉は平らで喉仏が見当たらない……何てことなの……この男は………否、この女は間違いなく白雪姫だ……!
雪のような白い肌……は、今はいずこで驚くほどに日に焼けて、春の日差しに黒光りをしているが、黒炭のような黒髪も(ずいぶん短く刈り込んでる)血のような赤い唇も(かなりガサガサ荒れている)、整いすぎた目鼻立ちも(彫り深くてハッキリしてる)、こうして近くで見てみれば白雪姫その人で間違いない。
が、しかし、ほっそりとして華奢な身体は、この1年で何をしたらこうなった? と言う程の変貌を遂げ、無駄な脂肪が一切無くて全体的に二回り以上大きくなっている。
完全に別人だ。
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