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「じゃあ、こうしようぜ。俺らで最後の力を振り絞って、このツリーあいつらに投げるんだよ」
「ばっかじゃねぇの! そんな事したらケガすんだろ! 下手すりゃ死ぬぜ?」
「ばかはオマエだ! あいつら三人スピードは落ちてるけど走ってるんだ。投げつけたって当たりゃしねぇよ、せいぜい後ろに落ちるだけだ。それでビビッて腰抜かす継母に言ってやるんだ。『反省したか? これで勘弁してやる』ってな!」
こうして勝手な思考の若者二十人はなけなしの力を振り絞ると、ツリーを縦に持ち直し、前方で逃げ走る三人に向かい、せーので投げつけたのだ。
何者かに突き飛ばされ倒れ込んでいたシンデレラ。
彼女は痛む身体をなんとか起こし、何がどうなったのかと顔を上げた。
眩暈で多少視界が歪むものの、その目に飛び込んできた信じられない光景に思わず目を瞠り息を呑んだ。
ボロボロになったツリーはさっきまでシンデレラが立っていた場所に確かに落ちていた。
あのままいればシンデレラは大けがをするか、最悪死んでいたかもしれない。
だが、彼女は助けられた。
何者かに……いや、娘を助ける為、渾身の力で突き飛ばし身代わりになった継母に、だ。
横に倒れたツリーの下からは、力なくのびた足だけが見えている。
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