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「美学ですか……護浩さんも怖いですよね」
あれこれはあるが、宍戸と俺は案外気が合っているらしい。言葉以上に、相手の思考を読みながら会話してしまう。
第十章 ずっとそばにいて 五
だらだらと喋っていた宍戸との電話を切ると、慶松が帰ってきていた。
「氷花、組み立てしていたの……」
慶松はシャワーを浴びてきていた。でも、慶松からはラーメンの匂いがする。
「夕食を作るか?食べに行くか?」
慶松と食べに行くのもいい。
「そうだね、外で食べて、リベンジでラブホかなあ」
「家飯もいいでしょ」
慶松はやや考え込む。
「家飯で、ラブホか?」
どうにもラブホは外せないらしい。そこで、インターネットで、どんなラブホがいいのかで議論になってしまった。
「俺は今まで、車で行くのが主流だったけど、慣れていないと、入ってしまってから部屋が気に入らないので出たくなった時があった」
空いていたと入ったら、プレハブのような部屋で、しかも、ベッドがボロボロであった。どうにも汚くて、風呂だけ使用すると出てしまった事がある。
田舎では歩いてラブホに行くなどない。車が主流であって、車のラブホには、どこか独特のルールがある。でも、誰にも会わずに部屋に行けるので、気分的には楽であった。
「俺は、半々だね」
でも、男同士のラブホには限定があった。そこを、互いに無言で確認してしまった。
「田舎でもいい」
「次はビルの屋上とか言っていなかった?」
そうも思ったが、やはり田舎でもいい。
「ほら、これなんか……何だ?」
部屋の中に川が流れていた。
「普通の部屋でいいよ」
そんなに、趣向を凝らしたものでなくてもいい。
そして、結局、家で食事をすることにした。あれこれ見過ぎて、却って、どこでもいいような気分になったのだ。
「俺、実家が旅館だろう?和風はダメなんだよね。親が出てきそうで萎える」
俺は野菜の味噌汁を作り、実家の漬物を出す。慶松は、珍しく中華料理を作っていた。
「岩崎の分は、ラップして置いておこうね」
食事を始めると、互いに一週間の出来事を報告する。普段でも、よく一緒に食事はするが、やはり時間は限られている。
「孝弘さんは元気かな」
宍戸と喋ってはいたが、孝弘の話題は避けていた。孝弘の嫁の有希が妊娠しているので、孝弘も余り外出はしない。
「宍戸経由だと、有希さんは順調だそうだよ。兄さんは、まあ順調……」
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