『COMPILER』

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 宍戸の信者が、付近のアパートを借り、子供の公園友達になったのだ。そして、互いに家にも行き来する仲となった。  そこで、家の中にも防犯カメラを仕掛けた。 その防犯カメラから、緊急を知らせる通知が入っていた。  俺は通知を受けても、仕事中でどうする事もできない。宍戸も同様で、仕事中であった。しかし、宍戸の信者が差し入れの名目で家を訪ね、何度もチャイムを鳴らしていた。 「そのまま、チャイムを鳴らし続けて……」  ドアは施錠されていたが、中の様子は防犯カメラに映っていた。男が数人侵入していて、石田の元妻を拘束している。子供が抱えられて、ベランダに向かっていた。チャイムが鳴っていても、子供を落し、女性を突き落とせるが、中にいる男達は逃げられない。 「独り言を言ってください」  そこで、遊びに来た風を装って、言葉が流れた。 「おかしいな、約束の時間なのに誰もいないや。だけど、防犯カメラに異常の点滅が付いているから警備が来るかな」  そこで、中の男達に動揺が走っていた。防犯カメラに気付いていなかったのであろう。防犯カメラの存在に気付き、男達が逃げる算段を始めた。  でも、呼んでいたのは警備ではなく、警察であった。防犯カメラの映像を流し、警察に説明をしている者がいるのだ。  やって来た警察は、ドアを開けて中に入り、女性を拘束していた者を捕まえていた。 「まだ、助けていない」  男性達は、女性の友人に頼まれてやったと言い張っている。 「警察の上層部から揉み消しが入るので、この映像を世界中に流してしまって」  現地の警察官が、上司からの命令で、犯人を連行できずに、イタズラの通報として処理するところまでを流しておく。  この映像は、やがて改竄されてしまう。その前に、全ての映像を、削除プログラムで消して置く。これで、映像の記録は人の頭にしか残らない。  でも、消された事で真実だと信じるのだ。 「望月さんも、これで石田さんの妻子には暫く手が出せない」  連続して事件が起これば、それは偶然ではない。  そこで、俺は、本来の仕事をする事にした。俺は、川越の許可を得て、久留実のちょいソフトの改良版を発売する事にしていた。これには、温科さんがサポートしてくれている。 「温科さん、一緒に食堂に行きましょう」  温科は、俺と食堂に行くのをかなり嫌がる。俺と一緒だと、営業一課もやって来て、静かに食べるということができない。
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