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「いや、一人で行くから」
「温科さん、デザート食べましょう」
温科は嫌がっていても、仕事はきっちりやってくれちる。しかも、又、実家に遊びに来いと誘ってくれた。
「又、コスプレさせる気ですね」
「他に何が出来るの?」
酷い言われようをしているが、温科の最大の賛辞らしい。
食堂で野菜スープを飲んでいると、次々に情報が入ってきていた。まず、数え歌のように、犯罪組織で裏切りと罵られた男が、道路に飛び出して即死する。その後に、その時、一緒に逃げた男が、鉄橋から飛び降りて逃げ切ろうとして、電車に轢かれた。重体で運ばれているが、まず助からないという。
でもこれは、皆、事故死と見せかけて、望月に誘導されているのだ。その誘導に気付かなければ、更に続いてゆく。俺は携帯電話を置くと、食事を再開する。
俺は、食堂の昼間の陽射しの中で、スープを飲んでいるが、それをじっと温科が見ていた。
「氷花君は、どうして野菜好きなの?普通、君のような人は野菜が嫌いではないのかな?」
「美味しいからです。山の中で木の実を食べて、物凄く美味くて、家中の野菜を味見してみて、生ならば美味しいと思ったのがきかっけでしょうか」
今は炒めても煮ても、野菜が美味しい。
「野菜という括りは大きいよね。果物は入らないの?」
「野菜は土から採れるものです。木の実も好きです。果物も嫌いではありません」
考えてみると、あまり好き嫌いはないのかもしれない。
そこで、又、携帯電話に連絡が入っていた。犯罪組織のチームを率いていた男が、組織のボスに命乞いをしてラブホに連れ込まれたらしい。内部に防犯カメラがないのでそれ以上は分からないが、出て来た時はボスのみであった。
これは、腹上死でいいだろう。多分、薬を摂取させられ、ショック死している。望月は、石田でそういう薬も試していた。それに、このチームの男は、アレルギーがありショック死し易かった。
そこに、元妻に待ち伏せされ刺し殺される者が発生し、次に又ホテルでミイラのようになった死体が発見される。
ここで、不安になった他のチームの仲間に首謀者の一人が撲殺され、次の一人は石田と同じ処刑が行われる。
全部、望月の考えた台本の通りで、宍戸の予言と合致する。
「八人目だ。宍戸、出番だよ……」
昼休みが終了したので、俺は席に戻る。
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