『COMPILER』

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「いつか、慶松さんも結婚するでしょう。護浩さんも子供を持つ……」  宍戸の言いたい事は分かっている、今にはいつか終わりがやってくる。でも、その終わりのために何が出来るかも必要だが、今をどれだけ大切に思えるかも重要であった。 「うん、俺は見失わないよ……」  俺に関わる全ての世界を愛している。この世界を守る。 「十番目、完了した」 「了解」  宍戸が十一番目を発表する。  望月は、宍戸の罠だと思っていても、現れた人物を拒めない。望月の前に現れたのは、弥勒の一人の医師、三反崎(みたさき)であった筈。自分よりも上の順位にいる三反崎が、望月に命乞いをして、身体を許すという優越感を望月は拒めない。  三反崎は、犯罪組織ではないが、治療としての死を与えていた。その事で、望月は三反崎を脅し屈服させようとしていた。ただの勢力争いであったのだが、三反崎は望月の狂気を知って自ら尋ねる。そして、望月は三反崎に自分の愛人になるならば、助けるという条件をだす。  でも、それが望月の傲慢さであった。何故、三反崎が弥勒であるのか。患者を安楽死に導いているだけではない。  子孫を残す繁殖行為、三反崎は体を結ぶ事で死を招くのだ。信者にも、そういう施術をしている。腹上死という、男の夢を三反崎は叶えているのだ。  これで、後は久留実の家族を助けたら終了になる。  宍戸の予言が当たった事で、暫くは、弥勒の連中も大人しくなる。それに、宍戸の順位が上に行けば、分かる事もあるかもしれない。  宍戸の通信を切ると、かなり弥勒と関わってしまったと思う。人は読み物と同じで、知れば知るほど、行動が読めてくる。過去と体験により、人は行動を決められている。それを運命と呼ぶ人もいるが、そんなものではない。  宍戸は望月より順位を上にし、石田を見殺しにしておいて、復讐など無意味だと説いた。石田の無念は、望月を信じた事だ。警察に通報もしないだろう望月に、石田は必死に助けを求めたと思う。石田は、最後まで望月を信じていた。 第十四章 ここに在るのは罪 四  遠見の本を読み終え、さてじっくりと乙訓の資料を読むかと端末を出した時、宍戸から連絡が入っていた。 「乙訓さん?彼が、久留実の家族を助けた」  乙訓は久留実と知り合いでは無かった。どうやって家を探し当てたのかも分からない。
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