白砂微譚

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 博士、というからおじいさんなのかと勝手に思っていたら、実際は三十歳にもなっていないように見える、ずいぶんと若い男の人だった。若い、なんて子供――だってまだ十代前半だ――の僕が言っちゃいけないかもしれないけれど。  僕と同じ黒い髪と黄色い肌。でも黒い髪にはいくらか白髪が混ざっている。  背はあまり高くなくて――と言っても僕よりは高い――、中肉中背という感じの体格に、いつも、少なくとも仕事をしている日中はいつも白衣を、きちんとボタンを留めて着ている。  薄い縁の眼鏡の向こうの目は、海のような、夜空のような濃紺で、ときどきどこか、ここではない遠くを見ているみたいだった。  声は低めで落ち着いていて、とても静かに話す。白い砂に沁み込むような、白い砂に溶けるような、まるで音もなく流れる白い砂そのものみたいな声音で、博士は僕に白い砂とこの浜辺のことを教えてくれる。
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