第一章 森に埋めた思い出

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 慶松は出会ってから六年を経過して、やっと俺に告白できたという。 俺は、そんな慶松にどう応えていいのか、時々考えてしまう。  車に荷物を載せると、まず、遠見相談所に納品する。 「遠見さん、氷花です。納品に来ました」  慶松は体の一部となるような、機械の開発を目指していた。 「入ってください」  遠見相談所は、表に駐車場が一つある。これは客用であった。  表の道は細く、路上駐車もできない。付近に有料駐車場も無かった。 「駐車場、使っても大丈夫ですか?」  予約があるのならば、時間をずらして来るしかない。 「大丈夫ですよ。今のお客様は歩いて来ています」  返事をしてくれたのは、遠見の妹の聡子であった。 聡子は、伊吹 聡子(いぶき さとこ)といい、既に結婚している。 遠見相談室から歩ける距離に住んでいるようで、いつも徒歩で来ていた。
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