第一章 森に埋めた思い出

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 結構広い玄関に入ると、すぐに待合室になっていた。 この玄関がやたらに広いのは、遠見が医者に行く時に、車椅子で移動するからであった。 玄関は、バリアフリーにもなっている。  待合室の椅子の奥には、受付があり、そこで聡子が編み物をしていた。 受付の横に、二階に行く階段がある。二階は遠見の自宅になっていた。  台車のまま中に入ると、相談者が壁と話していた。 この壁が重要で、壁の中の個室には、遠見が話を聞いている。  相談者には、遠見は姿を見せない。  俺は受付横のドアから入ると、遠見の横に立った。 「あら、氷花君。丁度良かった。媒体になっていて」  媒体というのは、遠見と機械の中継のようなものであった。  遠見は、首から下が動かない。 昔、車を降りた所を、酔ったバイクに突っこまれたのだ。 でも、その頭脳を活かして、遠見相談室をしている。
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