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お前は、“半分”だ。
いつか、“一つ”に、“全て”になるんだぞ――
俺が父について覚えていることは、俺が十二歳を迎えた日に父が言った、その言葉だけだった。
その言葉は焼き印のように脳裏に焼き付けられ、事あるごとに俺を悩ませた。
脳裏に響き渡る鉛のように重く無機質なその言葉に、俺の心音は騒がしくなり、額には脂汗がうかび、卒倒しそうになる。
父が亡くなったのは、俺が中学校にあがるころ、ある春の夕暮れのことだった。
父について俺は、それ以上は思い出さないようにしている。
それは前述の理由もさることながら、父の死には不審な点がいくつもあり、近所では俺か母がその死をもたらしたのだとする噂がたち、警察にも幾度となく聴取を受け、心身共に疲弊した記憶があるからだった。
さらに、俺にはそれを否定するはっきりとした所以が無かった。
それは荊のように俺の身に食い込み、未だに俺をさいなんでいる。
それどころか、俺の肉をしめつける荊は日に日にきつく鋭くなり、その数を増やしている。
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