第1章

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彼女と出会ったのは、そんな毎日に嫌気がさし、仕事を辞めて家とコンビニの行き来くらいしか外に出なくなった、夏のことだった。 彼女は俺に、最寄の駅まで行くバスの停留所は近くにないか、と尋ねてきた。 俺は、人と関わることにほとほと疲れ果てていたが、不思議と彼女には惹かれるものがあり、ぶっきらぼうながらも彼女の望む答えを告げた。 「よかったら停留所まで案内しましょうか」 最後に俺が発したその言葉に彼女はわずかに戸惑いの表情をうかべたが、一番驚いていたのは言った本人である俺だった。 俺は一体何を言っているんだろう。 相手は女の子、男の俺がそんなことを言ったら、下心があるようにしか聞こえないよな、普通―― 「あ、じゃあ、お願いしようかな」 彼女の意外な答えに、俺は今更ながらに紅潮する。 それを悟られまいと顔を伏せながら、俺は彼女の前に立って道案内を始める。 バスの停留所まで彼女を案内すると、俺はどうしてそこまで大胆になれたのか、「連絡先を教えてくれませんか」、と口にしていた。 彼女は今度は戸惑いの表情を経ずに、「いいですよ」、と言ってバックから紙とペンを取り出して連絡先を書きこみ、俺に差し出してきた。 俺は顔をふせたまま礼を言い、その紙を受け取って、「それじゃ」、と言って足早に帰路についた。
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