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"プレミアムスウィートいちご大福"
手のひらに乗せれば、半球型の可愛らしいフォルム。その愛らしさと裏腹のずっしりとした重量感。
中身のあんこが透けて見えるくらい薄く伸ばされて、指二本で持つには頼りない程の柔らかさ……なのに破れないこの弾力、もちもち感。
甘い粉雪を纏ったさらさらの触り心地を指先、手のひらで堪能したら、そっと口へ運んで……。
「食べちゃダメだよ」
友人の自室で手のひらに乗せた大福を高く掲げながら正座待機する男、春(はる)。
そのいつになくしゃっきりと伸びた背筋にやれやれと肩をすくめ、大福を取り上げたのはこの部屋の主、陸(りく)。
すんでのところで死守された大福は、包み紙代わりの可憐なカップに収まり、低いちゃぶ台に避難させられた。
大福から目を離せない春の目の前に、湯気のたつ緑茶を置き、ちゃぶ台を挟んだ斜め前に腰をおろした陸は、短く音をたてて自分のお茶をすすった。
「誕生日プレゼントにって買ってきたのに、最後のひとつまで食べちゃダメだよ」
「味見のつもりが……つい、な。恐るべしプレミアムスウィートいちご大福」
緑茶の香りが、ふわり漂う。
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