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本当は三つ買ってきたのに、味見だなんだと二人で一つずつ食べてしまったのだ。
役目を終えた可愛らしいカップが二つ、ちゃぶ台にコロンと転がる様は、絶妙な背徳感と後悔を煽り、しかし想像以上の美味な味わいに満足感を覚えた。
熱い緑茶で口の中をリセットしてみるが、それは逆に更なる欲求を掻き立ててしまう。
「もういっこ食べたい……」
「はーる。ダメだってば」
まるで禁断症状。想像以上にドはまりしたらしい春の釘付けの視線から大福を守る為に、陸は持ち帰り用の紙袋の中にしまった。
しかし、ただでさえ甘党の春がはまるのも理解できると、陸は空のカップを片付けながら思う。
見た目の可愛らしさ、触れた時の想像を凌駕する柔らかさ……何よりその食感は、今まで食べた大福という和菓子の常識を覆すものだった。
それはまるで絶妙な固さに仕上げられたホイップクリームと、きめ細かいスポンジケーキを一口頬張ったような幸福感。
プレミアムスウィートいちご大福は、スイーツだった。
「一個800円の価値はあるな」
「あ。陸も今、食いてぇって思ったろ?」
にやっと笑う春を無視して、お茶に手を伸ばす。
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