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陸はお茶のおかわりを注ぎに部屋を出た。ちゃぶ台に顎を乗せて大福が入っている紙袋を眺めている春に「食べちゃダメだよ」と再三言ってから。
なのに、部屋に戻って来ると大福は可憐なカップのドレスを着てちゃぶ台の真ん中に再び鎮座していた。
「春……?」
「た、食べてないぞ。出しただけ、見てただけ!」
わたわたと言い訳する春に、ため息を吐いてからお茶を注いでやる。それから大福をしまおうとしたのだが、陸も今、この大福の魅惑の肌に触れたら虜になってしまいそうで……躊躇った。
純潔な乙女の、穢れなく美しい柔肌のような手触り。
ふかふかとも、ぷにぷにとも違う絶妙な感触と弾力は、女性の胸の谷間に顔をうずめた時の至福と似ている。
歯を立てるのも気が引けて、かぶり付きたい野生を抑え、あまいあまいキスで味わい、恍惚に溺れてしまいたい。
陸と春の視線が、ちゃぶ台の真ん中で淑やかに佇む大福に絡み付いて、寸刻。
「おじゃましまーす……って、なにしてんの?」
部屋に入って来て早々、ちゃぶ台を挟んで見つめあう友人達のなんとも言い表しがたい雰囲気に、笑顔と口元を引きつらせたのは、湊(みなと)。
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