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春と陸は湊が来た事に気付いていながらも、大福から目が離せない。
どちらかが目を離せばその瞬間、ちゃぶ台の真ん中から大福は消え失せてしまうだろう……と、お互いに懸念して警戒しているのだ。
「あっ。プレミアム大福」
春と陸の間に座った湊は、二人の視線がこの大福に集中している事に気付いた。
何故ここにこれがあるのか分からなくもないが、しかし友人二人がどちらもこの大福を欲求している。
それなら湊は何をすべきか……。
「もー、春も陸もこれ好きなの? じゃあ半分こしようね」
絡み付く二人の視線が火花を散らす中、湊の手によりまるでダンスを踊るように引き寄せられていく大福。
それから湊の細い指先がそっとカップを脱がせると、きめ細かな肌が艶めく。
そのまま指で摘まんでしまえば形が崩れてしまうし、刃物を使っても柔すぎる大福は傷付いてしまうだろう。
押し黙る春と陸をよそに、湊は鞄の中から携帯用裁縫セットを取り出すと、細い糸を一本用意した。
くるりと大福にひと回し。くくっと引き絞り、糸が魅惑の大福の内側を暴いていく。
「いちご真っ赤。これは当たりだね」
はい、半分こ。
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