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にっこりと微笑んだ湊が、春と陸を交互に見る。
「せっかくこんなに美味しい大福があるんだから、そんな険悪な顔しないでよ」
湊もこのプレミアムスウィートいちご大福が大好き。一個800円もするし、いちごが旬の季節にしか販売されないから、食べられるのは一年に一度だけ。
均等に半分こされた大福を見下ろした湊は、おもむろにその半分をつまみ上げると、一口で頬張った。
「「あっ!」」
その流れるような動作に、春と陸は思わず同時に声をあげる。
もちもちと大福を味わっていた湊も、つい食べちゃった、と気付くがもう遅い。
「……ん。もちもちがすごく優しく歯に当たって……しあわせ」
途端に蕩けるような顔になる。
頬に片手を添え、ゆっくりと噛み締めていく湊の様子を、春と陸は固唾を飲んで見守った。
「このあんこがすごく滑らかで、舌の上でさらさら溶けてくみたい……。甘いけどくどくなくて、ふわっと軽い……」
湊の小さな鼻から声が漏れるたび、春と陸は身を乗り出してしまう。
「ん、ふ……。いちごが新鮮。甘みと酸味が口の中を気持ちよく撫でてくれる」
湊の手がもう半分に、のびる。
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