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その手を、春と陸の二人が掴んで止めた。湊は喉をコクリと鳴らして顔をあげる。
「ごめん、湊。オレ……もう我慢できない」
「春……?」
真剣な眼差しで湊を見つめる春に、湊は首をかしげた。
「湊、俺も堪えらんない」
「陸?」
湊の指に陸は指先を絡めていく。大福の白い粉砂糖がさらさらと指の間で馴染む。
湊は二人に見つめられて、顔が火照っていくのを感じ、肩をすくめてうつ向いた。
春と陸が、こんなにも好きだったなんて知らなかったからだ。そんな二人の板挟みになっていたところを、後から来て横取りしてしまった。
「ご、ごめんねっ。春、陸っ」
湊は二人の手から自分の手を抜き取り、きゅっと握って再び顔をあげた。
「二人がこんなに好きだったなんて、知らなかったの」
春と陸の顔もじわじわと赤くなっていく。戸惑い、焦って狼狽える湊の姿が可愛くて、甘い大福よりも愛しくて。
湊は「でもよかった」とホッと息をつき、傍らから紙袋を持ち上げ顔の前に掲げた。
「三人で食べよ?」
春の目が見開き、陸はしばらく硬直した。
「二人とも、取り合うくらい好きだったんだね……大福」
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