あんこは……こし餡派

8/9
前へ
/9ページ
次へ
湊の手により、春と陸の前にもプレミアムスウィートいちご大福がちょこんと鎮座し、手に取られるその時を待っている。 しかし湊は、自分用にも買った一個と、食べてしまった半分の片割れがある事に気付き、焦った。 「あ、これじゃズルいかな?」 どうしよう、もっと半分する? と困り顔で糸を構える湊から、春は糸を取り上げた。 「いいよ、全部食えよ湊」 春と陸は、先に一個ずつ食べた事を話した。 「そもそも、湊へのプレゼントにしたくて買ってきたんだけどね」 暖かいお茶を注ぎながら、陸は微笑む。 それから春と陸は声を揃えた。 「「湊、誕生日おめでとう」」 蝋燭なんて無いし、ケーキでもないけど。湊はこの大福が大好物なんだって知ってるから。 湊も、自分の大好物を二人にも味わってほしくて。ちょっと割高だけど、一緒に楽しみたくて。 プレミアムな時間は、プライスレスだから。 三人でお祝いしようと思ってたんだ。 プレミアムスウィートいちご大福。 甘酸っぱい気持ちを、甘いあんこで優しく、柔らかいお餅でそっと包んで。 一緒に食べたら、最高の時間を分けあえる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加