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・・・―――
「おじいちゃーん!居るー?来たよー!」
セミの声がする。肌に纏う暑い夏の風。
「あぁ、いらっしゃい。」
あれから何十回夏が来ただろうか。セミの声を聞く度にあの夏の日を思い出し、そして彼女の笑顔を思い出す。
「ひぃじじ、こんにちは!」
「はい、こんにちは、りっちゃん。」
「お庭であそんでいーい?」
「いいよ。いっといで。」
「コラりっちゃん!先にひぃばばにナムナムしてからでしょ!はい、おじいちゃん。買ってきたよ。」
彼女によく似た孫と、その娘が遊びにやってきた。
孫の手には、ペットボトルのサイダーが握られていた。
「ありがとね。」
「あ、おじいちゃん、開けようか?」
「ハハッ、大丈夫だよ。コップ出してくれるかい?」
「はーい。」
ペキッ と、捻った口から、シュワシュワとあの音が聞こえた。
「おばあちゃん、サイダー好きだったもんねぇ。ハイカラよね。」
食器棚から妻と僕のコップを出してくれた孫からそれを受けとると、僕はサイダーを半分ずつ注いだ。
「そうだね。サイダーは、僕達のおもいでだからね。」
そして僕は、妻のコップを仏壇に置いた。
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