第1章

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とうとう最後の一軒だ。タッちゃんと顔を見合わせて頷く。大きな家だった。インターフォンを鳴らすと中からゾロゾロと人が出て来た。驚いたけど、ここで気を抜いてはダメだと、タッちゃんと目で話すと巾着を持つ手に力が入る。 7人…。それぞれ手には竹で編んだ入れ物を持っている。挨拶をすると俺達の首から下げた通行手形をじっと見て、ご苦労様と言った。 巾着に飴を入れて貰う。何だか凄い数だ。入りきるのか心配になったけど、そこは不思議な巾着、全部入った。お礼を言って頭を下げた。 「ご苦労様でございましたな。今年の準備する者に選ばれた若者は心が強い。いやぁ、ムズムズしたでしょうに。」 ニコニコして親しげに話すおじさんは、この家の主だろう。俺達はもう一度お礼を言ってその場を後にした。 歩くスピードが増す。タッちゃんと無言で待機所まで戻って家の中に入ってドアを閉めた瞬間、膝が砕けて、二人して座り込んだ。 チッ… 確かに聞こえた…あれは舌打ちだ。
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