第1章

5/19
前へ
/19ページ
次へ
準備する者を選ぶのは6月の新月の1ヶ月前だ。 月齢0.0今年の6月の新月は24日だ。そして今日は5月24日。 準備する者は満月の夜に神社に入り、神社にある本殿の裏に造られた待機所と言われている家で新月まで生活をする。 満月は9日だ。生活に必要な物は全部揃えてあるから着替えだけを持って行けばいいらしい。タッちゃんと一緒に準備をする。 俺もタッちゃんも大学生だから、時間は何とかなる。2週間は大学に行けない。道の入口を閉じる儀式を優先にするのは当然で、道を閉じなければ大変な事になるからね。 そして、とうとう、やって来た!9日の満月の夜。両家の家族に見送られて10時に家を出た。 神社に続く一本道。夜はちょっと怖い。 「タッちゃん。何かこえ~な。」 「リョウ、何だ?ビビってんのか?」 「ビ、ビビってねぇーよ!」 月明かりに照らされて、ひたすら歩いた。ゆるいカーブを過ぎて直線になった時、突然、白い着物を着たお婆さんが、ご苦労様と声をかけて来た。驚き過ぎてタッちゃんとふたりして、うわぁ!と大きな声をあげた。 「こ、こんばんは…。」 ドキドキしながら、タッちゃんと俺がお婆さんに挨拶をすると、お婆さんは毎年ここで準備する者を見送るんだと話してくれた。 そして、タッちゃんと俺に大きな飴玉をくれた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加