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「美咲ー!今日の夜、合コン行かない?1人急に行けなくなっちゃって。」
更衣室で聡美が素早く着替えをしながら明るい声で言う。午前の部の仕事が終わると、聡美はいつも1度家に帰る。
「ごめん。私そういうの苦手だから。」
刺のある言い方にならないよう気をつけながら、目の大きさを調整して、困った顔をつくる。
「お願い!1人くらい美人な子連れてかないと、男側がめっちゃ不機嫌になるから。美咲が来たら男ら絶対満足するし!」
聡美はそう言って手をパチンッと合わせて美咲の前で目をつむる。
聡美の方が、ずっと美人だ。
「ごめん。今、いい感じになってる人いるから。」
「え!あ!もしかして前言ってた街コンで会った人?」
言葉には出さないが、困った顔よりは少し大きめの、黒目がまあるく見えるようなはにかんだ目をつくりながら、ゆっくりと頷く。
「そっかぁ~。それなら仕方ないかぁ~。」
良い人いるなら私も街コン行こうかなぁ~。そもそも美咲は街コン行く必要ないのにぃ、と聡美はブツブツ言いながらも、サーモンピンク色のショルダーバッグのなかをあさる。黒地にショッキングピンクの水玉模様で目がチカチカするカバーをつけたスマホを取り出したかと思うと、次の候補となる女を探しているようだ。
その横顔を見て、聡美も行ったら?とは言わない。聡美はあの街コンに行ったら、勿体ない。
聡美は週1で歯のホワイトニングもしているし、鼻の穴の形も綺麗だ。
けれど多分聡美は、あの街コンに行ってもモテないだろう。
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