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籠からの声
隣の部屋から声がする。
人間を真似た、でもあからさまに人のものではないと判る声音。
生まれたての雛から育てた九官鳥。とてもなついてくれて、俺の話す言葉を一生懸命真似ていた。
そいつが死んだのが先週だ。
だから庭の片隅に埋めて、丁重に供養した。
なのにいまだに、片づけられないままの籠かある部屋から声がする。
あいつが戻ってきてくれたなら幽霊だとしても会いたいけど、違った場合がヤバすぎて、いまだ、籠のある部屋には入れない。
声はそっくりだし、喋り方もそのまんまなんだ。そのまんまなんだよ…。
どのみちいつかは籠をどうにかしなければならない。だったらこのタイミングでと思うけれど、どうしても最後の一歩が踏み出せない。
ほら、今もまた何か喋ってる。俺を呼ぶように。俺を誘うように。
…その声の誘惑に負けて、もう、隣室への扉を開けてしまおうか…。
籠からの声…完
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