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特別イケメンというわけではないが、背が高くて、どこか儚げで優しい印象の人。
ヒナコは密かに、彼に憧れていた。やはり、お姉ちゃんのような、聡明で美人が男の人は好きなのだ。
ヒナコの心の中を、真っ黒な墨のような感情が満たした。
ある日、先輩がうちに遊びに来た。いよいよ、二人は親公認の仲に発展しそうだ。
お姉ちゃんが照れくさそうに、両親とヒナコに彼を紹介する。表面上ヒナコは、二人を祝福するフリをしたのだ。ヒナコは、二人っきりにしたくなかった。だから、邪魔を承知で、お姉ちゃんの部屋にずかずかと入り込み、二人っきりの時間を無くしてやったのだ。
さすがに、お姉ちゃんも、戸惑っているようだ。先輩も、口には出さないけど、そわそわして何とかヒナコを部屋から追い出す方法を考えているに違いないのだ。ヒナコをまた真っ黒な感情が満たす。二人っきりになんて。させるものですか。お姉ちゃん、約束したじゃない。何でも半分こ。
そうでしょ?お姉ちゃん。
「あ、お姉ちゃん。この前、お向かいのおばちゃんからいただいた、いい匂いのするお茶。
あれ飲みたい。先輩も飲みたいでしょ?お願い、お姉ちゃん。あのお茶、淹れてき て!」
ヒナコは、お姉ちゃんにそう言った。すると、お姉ちゃんは、ニコニコしながら
「もう、ヒナコはわがままなんだからぁ。じゃあ、お菓子もいっしょに持ってくるね。」
と言い、下のキッチンへ向かった。
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