プロローグ

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  ある日、ボクが返却本を棚に戻す作業で高所に   苦慮していると、後方からヌゥ-ッと   伸びてきた手が、代わりに本を棚へ戻してくれた。      それが彼・羽柴仁先輩だった。      いつもは遠くから眺めていただけの雲上の人が      目の前にいるって現実で、   ボクはかなりテンパッてしまい、   夢にまで見たオイシイ状況なのに……   彼をまっすぐ見る事も出来ない。   あぁ、はしばせんぱい……羽柴さん―― 先輩っ!   好きです……スキです……。      気が付いたらボクは ――、 「……羽柴先輩、大好きです」   まともに見る事も出来ない相手に向かって、   大胆にもいきなりそんな事を口走っていた。   数秒後……自分がどんなに場違いで   愚かな事をしたのかハッ!と我に返って、   堪らずこの場から逃げ出そうとしたけど。   何故か彼の手がボクの腕を掴んでいて……。     そして、彼はボクの耳に口を寄せこう言った。 「返事、聞く前に何処行く気?」 「あ、いや、その……」 「キミ、名前は?」 「あ …… 柳生真守、です」 「まもるくん、ね……キミ、随分と前から俺の事  かなり熱心に見てたよね」   「す、す ―― すいません! や、やっぱ、男から  あんな風に見られるなんてキモいっすよね」     彼は形のいい唇を緩めて”ふふふ……”と   小さく笑った。       「あの程度でキモいなんて思ってたら、この学校じゃ  やっていけないよ……それにね ――」        再び彼の口がボクの耳元の方へ寄ってきた。      「オレは、嬉しかった」   ……へ?       確か今 ”嬉しかった”とかって聞こえたけど、      ボクの聞き違い?   それを確かめる間もなく          その場で男にファーストキスを奪われ ――、   夢見心地でポーっとしている間に、      次の週末は彼の家へ遊びにおいでって招かれ。     その土曜日の夜、初めてリアルな羽柴先輩と   肌を重ねた。    
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