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「……やはり、マモ、なのか?」   ボクが恐る恐る振り返ると、おっさんは既に   振り返っていて、サングラス越しの視線で     ボクの方をじーっと見つめている。    「あんた、誰? なんでボクの ―― あ! そっか  コミットプレイスのお客さんだ」       コミットプレイスとは”N・U・C”にある   社交クラブだ。        店名にある”コミット”とは、   関係する事・参加する事・関わり合う事。   を意味する。   だから《コミットプレイス》とは ――   参加して ~ 関係したり、関わり合ったりする   場所のこと。   客層は10代後半から30代位までの若年セレブが   中心だけど、たま~に暇を持て余したような   有閑マダムやちょびリッチな小父様もいたりする。   ちょっとした小遣い稼ぎだったら、   下手にバイトするよかずっと効率がいいんだ。   気持ちいい事して飯まで奢ってもらえるからね。   終電過ぎの深夜0時から始発まで、   多い日はひと晩で10人近く相手にする事も   あるんで、客の顔などいちいち覚えちゃ   いられない。         いずれにせよ、このおっさんが怪しい事には   変わりない。   触らぬ神に祟りなし。       「悪いけど今はそうゆう気分じゃないから」   おっさんは黙ってサングラスを取り、   口許を覆っていた大判のマスクも外した。 「!!……」 「良かった……これを外しても気付いて貰えなかったら  どうしようかと思っていた」   「ど ―― どうして……」   そのおっさんは8年前、留学と同時に音信も   付き合いもぱったり途絶えた初恋の人   『図書館の貴公子』こと ―― 羽柴仁   その人だった。           
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