7人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「……やはり、マモ、なのか?」
ボクが恐る恐る振り返ると、おっさんは既に
振り返っていて、サングラス越しの視線で
ボクの方をじーっと見つめている。
「あんた、誰? なんでボクの ―― あ! そっか
コミットプレイスのお客さんだ」
コミットプレイスとは”N・U・C”にある
社交クラブだ。
店名にある”コミット”とは、
関係する事・参加する事・関わり合う事。
を意味する。
だから《コミットプレイス》とは ――
参加して ~ 関係したり、関わり合ったりする
場所のこと。
客層は10代後半から30代位までの若年セレブが
中心だけど、たま~に暇を持て余したような
有閑マダムやちょびリッチな小父様もいたりする。
ちょっとした小遣い稼ぎだったら、
下手にバイトするよかずっと効率がいいんだ。
気持ちいい事して飯まで奢ってもらえるからね。
終電過ぎの深夜0時から始発まで、
多い日はひと晩で10人近く相手にする事も
あるんで、客の顔などいちいち覚えちゃ
いられない。
いずれにせよ、このおっさんが怪しい事には
変わりない。
触らぬ神に祟りなし。
「悪いけど今はそうゆう気分じゃないから」
おっさんは黙ってサングラスを取り、
口許を覆っていた大判のマスクも外した。
「!!……」
「良かった……これを外しても気付いて貰えなかったら
どうしようかと思っていた」
「ど ―― どうして……」
そのおっさんは8年前、留学と同時に音信も
付き合いもぱったり途絶えた初恋の人
『図書館の貴公子』こと ―― 羽柴仁
その人だった。
最初のコメントを投稿しよう!