春の宵、灰に泣く

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「……どうか、幾ばくか。お前の幾ばくかを、己れの人生に連れ回す事、どうか赦してくれ。」  ――愛しているよ、僕のシリカ。  少し呆れて、それでも陽だまりに似た微笑みを浮かべるのだろう。木漏れ日の下で、煙水晶を翳したその指先で、己れの泪を掬うだろう。  それを分かっているからこそ、己れは愚行を突き進めるのだ。  薬匙で清陽を掬う。骨粉は月に照らされ、青白く仄かに光っていた。
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