1.半分しか伝わらない

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1.半分しか伝わらない

 チャイムの音と共に皆が一斉に席につく。1時間目は英語。しかし、問題発生。 「なあー、湊(みなと)」 「なに、達樹」 「筆記用具忘れた。貸してくんない?」  バッグを漁っても見慣れた筆箱の姿がなかった。仕方がないので前の席の湊に何か書くものを借りるため、声を上げる。 「いいよー」  湊は振り向かずに答える。やっぱり持つべきものは友である。 「はい」  渡されたものは消しゴム。オンリー。 「おい」 「うん?」 「いや、書くものも貸してくれよ」 「えー、そうならそうと言ってよ」 「察せよ!」  湊には伝えたいことの半分しか伝わらない。  天真爛漫で明るくて、それなりに見てくれはいいくせにコミュ障だ。話が伝わらないという点において。 「ごめん、シャーペン予備ないや。シャー芯だけで頑張って?」  頼んどいてそりゃないって感じだけど、こう言わざるを得ない。 「お前使えねー」
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