2.ジュース代にしかならない

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2.ジュース代にしかならない

 財布を覗き込む。男子高校生の寂しい懐事情がそこにはあった。  目の前の席に座って教室のカーテンと一緒に風に肩までのセミロングの髪を揺らしている女子生徒に背中越しに話しかけた。 「おい、湊。昨日貸した432円、返せよ」  湊はくるりと振り返ると、しまった、という顔をした。 「あー、ごめん」  そうしてバッグをごそごそと漁り、財布を取り出す。  人のお金を漫画代なんかに使わないでもらいたい。俺だって金欠なのだ。と、愚痴をこぼすと。 「いいじゃん。どうせ私の買った漫画、達樹も読むんだし。あ」 「何?」 「216円しかないや。とりま、返すねー」 「こういう場面でも律儀に半分にしなくていいんだよ」  じゃらりと小銭が机の上にぶちまけられる。 「まったく困ったもんだよねえ」  あはは、と笑う湊。悪びれた様子は全くない。 「あっ、てめっ、千円札いっぱいあんじゃねえか。それで返せよ!」 「昨日補充したー」 「利子付けんぞ」
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