5.美味しかった

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5.美味しかった

 俺には隠れた得意技があった。それはお菓子作りである。クッキーやケーキなどの洋菓子が好きで、気付けば自作するようになっていたのだ。 「意外だよね。こんな無愛想な男がお菓子作りなんて」 「失礼な奴だな」 「今度、私にも教えてよ。っていうか、レシピないの」 「いいだろう。俺特製、オレンジピール香る生チョコレートケーキの秘伝レシピを湊に教えてやろう。これなら湊にも作れるだろう」  そう言って、ケーキの作り方をいちから湊にレクチャーしてやる。湊はふむふむと頷きながら、レシピをスマホにメモしていく。 「よし。なかなか複雑だったけど、だいたい分かった! 日曜に作るから月曜持ってきてあげるよ」 「楽しみにしとこう」  月曜の朝。湊がケーキを持ってやって来た。 「やっちゃった! 計量間違えた! 砂糖半分にしちゃった!」 「だろうと思った!」 「不味いかも!」  見た目は可愛らしいハート型のチョコケーキだ。 「いや、大丈夫だろう」 「どうして?」 「恐らく湊、お前は全ての材料を半分にしたはずだ!」 「そんなバカな! 本当だ!」 「全て半分なら割合は変わるまい」 「さすが私のことよく分かってる! はいあげる!」
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