半分こ

6/7
前へ
/7ページ
次へ
ある時、ひとりぼっちの少女が困った顔をしていました。 少女は、それなりに可愛くて、それなりに裕福で、それなりに賢くて、それなりに才能がありました。 顔を押さえて蹲っても、道端でぐったりしても、文字を見てうーんと唸っても、絵筆を手にして悩んでも、誰も少女を気にも止めません。 何故なら、少女は全てが中途半端にできて、中途半端にできないからです。 いちばん不幸でも、いちばん幸せでもないからです。 ありとあらゆるものを半分だけ持った少女に、どうしたの、とたまたま通りかかった少年は聞きました。 少女は答えます。 「わたしはかつて、この世にあるすべてのものを持っていました。でも、もうそれらは全部半分こにしてしまったのです」 なら、と少年は少女に提案しました。 なら、君の孤独を俺と半分こしよう。 少女は驚きました。 だって、少女はもうすべてのものを半分こしたと思っていたのです。 少年が少女から孤独を半分もらうと、ひとりぼっちだった少女はたちまち【二人】になりました。 少女は不思議に思いました。 半分こをした筈なのに、孤独はあっという間にどこかへ消えてしまったのですから!
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加