誰か

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暗くて、夏の夜にしては涼しい。 俺は、それに恐怖さえ感じていたと思う。 真っ暗な吸い込まれるような黒に、儚く淡い光。 その周りだけが、群青色に見えた。 「あ…」 すーっと光の筋が空を横切った。 すぐに消えてしまって、少し悲しい。 「見えたか?」 横にいた父が聞いた。 「うん。」 「父さんも見た。あ!ほらまた!」 「え!どこ!」 父さんの方が一歩リードだな。と、得意げに笑う。 父さんは、俺より楽しそうだった。
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