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「ほら、今度から気を付けるんだよ」
大粒の涙を流していた男の子は、目の前にある自分の靴を見て、笑顔を取り戻した。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ありがとうは、あっちに言ってあげて」
蕗野はそう言って、俺の方を指差した。
ちょうどタイミング良く、俺の足が地に付く。
男の子は自分の靴を両手で抱え、笑顔で駆け寄ってくると、俺の目の前で止まり、お行儀よく頭を下げた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
いや、まず靴履けよ。
「おう、もう上に飛ばし過ぎんなよ」
俺は心の中に生まれたツッコミを内に留め、笑顔でそう返した。
頷く男の子に、蕗野が心配そうに尋ねる。
「そういえば、学校行くんじゃない? 時間大丈夫?」
「あっ、ほんとだ! 遅刻しちゃう!」
男の子はそのまま元気よく公園の外へ駆けて行った。
いや、だから靴履けよ。
男の子の姿を見送った後で、蕗野がリュックを投げてよこした。
「さすがヒーロー、って言った感じかな。お疲れさま」
「やめろよ。俺はただちょっとお人好しなだけだ」
「まっつーは困っている人を見たら放っておけないもんね」
「うるせぇ。ほら、俺らも行くぞ。ボヤボヤしてると、俺らまで遅刻しちまう」
リュックを背負うと、俺と蕗野は公園を出て、学校への道を急いだ。
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