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俺が拳を固め、モジモジする幼馴染と遠い目で見つめる男二人に怒りの鉄拳を振るおうとしたそのとき、童部兄弟が別方向を向いて、同時に声を挙げた。
「「夢原((ゆめはら)鏡華(きょうか)さんだ!」」
俺たちはその声に反応し、兄弟が見つめる先を目で追う。
そこにいたのは、門を通りながら女友達と話す、肩まで伸びたシルクのようにしっとりとした銀髪に、美術室にある造形物と見間違えるほど綺麗に整った顔、くびれの際立つ芸術品のような美しいスタイルを持った女子高生だった。
「学年一の美女であり」「同時に学校一の美女」
「勉強できて」「運動出来て」「華麗に動けて」「気配りできる」
「フラれた男は数知れず」「モデル事務所すら断られる」
「彼女のいる所には動物が集まり」「歩いた道には花が咲く」
「容姿端麗!」「才色兼備!」
「沈魚落雁!」「閉月羞花!」
「明眸皓歯!」「品行方正!」
「全ての言葉の生みの親!」
「それが我が学校一の美女!」
「夢原」「鏡華さん」
「「だ!」」
「お前らそれ、どこか聞いたことあるフレーズだな……」
それ、やりすぎには注意しろよ。
俺はやれやれと首を振る。
だがしかし、童部兄弟が言ったことは決して大げさな表現などではなかった。
彼女の持つ物静かな雰囲気には、他の者を寄せ付けない神々しさが含まれており、決して目立つ動きや派手な言動は取らないのだが、その落ち着いた動作が逆に他者との格の違いを明らかにしていた。
現に彼女の歩く姿を見て、あまりのその素敵さに、性別問わず多くの生徒が息を飲んでいた。
「夢原さん、相変わらず美人だね……」
井上が俺の隣で感嘆の声と共にそう漏らす。
「う、美しい……」
助平が心からの言葉を呟いた。
って、おい。お前そんなキャラじゃなかっただろ。
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