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「さっき夢原さんがいた」
「夢原さんここを通った」
「夢原さんの姿が見れた」
「夢原さんのオーラを感じれた」
「夢のような時間だった」
「現実だと信じられないような時間だった」
「まだ夢だと思ってる」
「もはや夢であれって思ってる」
「――いやいや、夢原さんもここの学校の生徒なんだから、現実では好きに通らせてやれよ」
興奮冷めやらぬ様子で交互に語る童部兄弟に対し、天飛は至極当然なツッコミを入れた。
そして天飛は腕を組み、納得したように首を縦に振る。
「でもなるほどな。それでこの空気ってわけか。それは仕方ないわ。だって、夢原さん美人だもんな――――って、イテテテテッ!」
天飛が何の前触れもなく飛び立つ鳶のようにいきなり飛び上がった。
全員が天飛の唐突な情緒の変化にビクッと反応する。
脇を見ると、音無さんが俯いて頬を膨らませながら、天飛のわき腹を抓っていた。
「イテテテ……大丈夫、大丈夫! 大丈夫だから! 夢原さんは美人だけど、オレはあっちゃんの誰にも負けない可愛さに首ったけだから、安心して――って、イッテぇぇぇぇええええ!」
天飛がより強くなった痛みで、手足をバタつかせ騒ぐ。
「おい、愛! なんでより強く抓るんだッ! オレ何か悪いこと言っ――イッテ! イッテ! イッテぇぇぇぇええええ!」
音無さんは、天飛の脇腹を捻りあげつつ、俯きはそのままで、頬を染めながら、笑みを浮かべていた。
相変わらず仲が良いな。
全員がそれを見て、ほんわかとした微笑みを浮かべる。
「相変わらず仲良いね。わたしもあぁいう風になれたらなぁ」
ポツリと漏らした井上の呟きに、助平が目を光らせて反応した。
「お任せを! おれが存分に可愛がってあげましょう」
「キャアアアアアッ!」
飛び込んでおいでといわんばかりに手を広げる助平を見て、井上は悲鳴を上げ俺の後ろに逃げ隠れる。
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