4/5

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
こんな惨めな人生を送ることに、どんな意味を持つと言うんだろうか。 ワシのようなちっぽけな存在を、おそらく人間どもは気付いておらんだろうし、ワシと出会った若い奴らだって、ここを去ってしまえば、ワシに関する記憶など、すぐに消えてしまうに違いない。 まぁ、中にはイイ奴らもいたがな。 ワシだって、別れてしまえば、イイ奴らも、悪い奴らも、記憶の中では一緒になっとるしな。 選ばれていった奴らとて、その後に幸せになったかどうかはわからんのだからな。 奴らのその後について、誰も知るモンはいない。 どんな世界が待ち受け、どんな体験をしたのか、残されたモンは、貧弱な想像力を働かす以外に無いわけだからな。 まぁ、このまま残り続けて、新しく訪れてくる若い奴らを話し相手にしている方が、よほど幸せなのかもしれんがな。 ああ、型が降りてくる。 さて、今回はどうかの。 確率は半分なのだが… お……おお、おおお! 何ということだ。 このワシが選ばれてしまったぞ。 型で抜かれた丸い円は、確かにワシを取り囲んでおる。 奇跡だ。 四十年も見捨てられてきたこのワシが、今さら選ばれるなんぞ。 いやいや、決して望んでおらんかったというわけではない。 せっかく選んでもらったモンを、わざわざ拒む必要もないだろうて。 実を言うと、ワシはこうなる瞬間を、ずっと待っておったんだよ。 誰も話してくれなんだ新しい世界が、この先に待ち受けておる。 選ばれなんだ諸君達、決して希望は捨てるでないぞ。 もう、諸君達の相手を務めることはできんが、待っていれば、いつか機会は訪れる。 時が諸君達の希望を叶えてくれるだろうよ。 さらばだ。 さらばだ~。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加