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こんな惨めな人生を送ることに、どんな意味を持つと言うんだろうか。
ワシのようなちっぽけな存在を、おそらく人間どもは気付いておらんだろうし、ワシと出会った若い奴らだって、ここを去ってしまえば、ワシに関する記憶など、すぐに消えてしまうに違いない。
まぁ、中にはイイ奴らもいたがな。
ワシだって、別れてしまえば、イイ奴らも、悪い奴らも、記憶の中では一緒になっとるしな。
選ばれていった奴らとて、その後に幸せになったかどうかはわからんのだからな。
奴らのその後について、誰も知るモンはいない。
どんな世界が待ち受け、どんな体験をしたのか、残されたモンは、貧弱な想像力を働かす以外に無いわけだからな。
まぁ、このまま残り続けて、新しく訪れてくる若い奴らを話し相手にしている方が、よほど幸せなのかもしれんがな。
ああ、型が降りてくる。
さて、今回はどうかの。
確率は半分なのだが…
お……おお、おおお!
何ということだ。
このワシが選ばれてしまったぞ。
型で抜かれた丸い円は、確かにワシを取り囲んでおる。
奇跡だ。
四十年も見捨てられてきたこのワシが、今さら選ばれるなんぞ。
いやいや、決して望んでおらんかったというわけではない。
せっかく選んでもらったモンを、わざわざ拒む必要もないだろうて。
実を言うと、ワシはこうなる瞬間を、ずっと待っておったんだよ。
誰も話してくれなんだ新しい世界が、この先に待ち受けておる。
選ばれなんだ諸君達、決して希望は捨てるでないぞ。
もう、諸君達の相手を務めることはできんが、待っていれば、いつか機会は訪れる。
時が諸君達の希望を叶えてくれるだろうよ。
さらばだ。
さらばだ~。
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