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そう述べるI田教授だからこそ「私」を隠す。
大学教授である自分の立場を、偉人に重ねる。
だからこそ、謎解きは爽快感を孕(はら)む。
I田教授の「真実」を聞いた時は半信半疑だった。
何処かの誰かがI田教授を貶(おとし)める為の風評だと思ったのは、教授のゼミを受けている我々にとっては半分もいかない半信半疑だった。
半信半疑と言いつつ、心の内をさらけ出せば「疑い」の比率が高い半信半疑だと言える。
また、I田教授がかつての日本人が如く死守した「私」を、五十路(いそじ)を越えた人生のベテランが意図も容易くさらけ出すヘマを犯さないだろう。
半信半疑の中に、半分は教授を信じたい心もある。そして、半分は「教授も人間なんだ」と安心も……
そのせめぎ会う葛藤に楔(くさび)を打った事で我々ゼミの人間の間で、いよいよ真実味を帯びる。
僕は半分と、半分が、半分に入り乱れていた…
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