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その島の星空は奇跡的に美しかった。まるで宇宙に放り込まれたような感覚。少年の頃想像した星々の冒険が大人になってもスタートする。
ところが、現実へ目を向ければ全然違った。
母が膵臓癌になり余命宣告されてしまい、息子の恒世は看病のために島へ帰って来た。
その痩せ細った母がベッドに寝ている。
一週間もつか分からないと医者に言われた。
窓から満天の星空を見上げていた恒世は潮風を気にして窓を閉めた。
するとさっきまで寝ていたはずの母が上半身を起こしてこっちを見ていた。
「うわっー、なんだよ」
「コウセイ。あんた今願い事してくれたでしょ?」
いきなり母は真剣な表情でそう言った。
「流れ星が見えたんで、母が元気になるように祈った」
「その願い事、叶うかもよ」
「えっ?」
「今夜はスピカとアークトゥルスと北斗七星が連なり春の大曲線を描く日。神々が盛大な宴会をしている」
母はそう言って満面の笑み浮かべた。
それを見た恒世は嫌な予感がした。
「変な事言わないで、薬飲んで寝た方がいい」
「そうね」
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