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「な、何をした?痛くて動けない」
「そこに薬あるから、それを飲めば痛みは取れるわ。頭はボーっとするけどね」
母は昨夜と同じ満面の笑みを浮かべてそう言った。
まさか、星の願いが叶ったって言うのか?
「可哀想に、でもあなたが願ったことだからね」
母はそう言ってキッチンに行って朝ご飯を食べ始めた。検量の終わったボクサーのように、痩せ細った身体に栄養を補給した。
こんな事ってあるだろうか?
とにかく恒世は痛みに耐えられなくて薬を飲んだ。
そしてその痛み止めのせいで眠ってしまい、再び目を覚ました時には母は消えていた。
「魔女め」と呟き、携帯電話で妹に電話した。
それと、机の引き出しに入っていた手紙を見つけた。
「馬鹿ね。お兄ちゃん」
妹の光里は母が病気になってからも家に寄り付かなかった。
「母の怖ろしさは知ってるでしょ?葡萄酒に精霊の粉が入ってたはずよ」
恒世は昨夜飲み干した葡萄酒の瓶を見た。
母は最初から自分に呪いをかけるつもりだったのか?
「母はあと数日で死ぬかも知れないと医者に告げられたんだぞ。ヒカリ、どうしたらいい?このままだと自分が死んでしまう」
「叔母さんには私から電話して、病院に連れて行くように言っとくわ」
「母は?」
「その手紙、昔の恋人からだよね。きっと京都に逢いに行ったのよ」
妹の光里が京都に行ってくれる事になった。
しかし、母を説得することができるだろうか?
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