その二・病気の交換

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魔術の用語もあり意味は不明だが、恒世には母が話していた昔の恋人との悲恋話を思い出していた。 「おまえも子供の頃聞いた事があるだろ。あの日に帰りたいって、母の口癖を」 「うん。いつもユーミンの歌が流れていた。でも、そんな事できるの?」 「分からない。でもあの母なら、死を覚悟して実行するかも」 「そうね。とうせ死ぬ予定だったんだし」 「でも、僕はどうなる?」 「母が死ねば、病気も母に戻るかもよ」 「希望的観測で言わないでくれ。そのままガンが居座るかもしれないだろ。ヒカリ、お兄ちゃん痛みを堪えて話してるんだぞ」 「わかってるわよ。清水寺へ行ってみるよ」 光里はそう言って電話を切った。 恒世も叔母に薬を飲まされ、疲れ切ってベッドに横になる。 しかし気になってまた母のノートを開くと、そのページにはバイクに二人乗りしてジャンプするイラストが描いてあった。 清水寺をバイクでダイブするつもりなのか? そして、二人であの頃にタイムスリップして人生をやり直す。 まるで「俺たちに明日はない」の、ボニー&クライドだな。と、そんな想像をしながら恒世は眠りについた。
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