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ソファに並んで座っていた二人は身を捻り、胸を合わせるようにして抱き合った。瞳の鼓動が伝わってくる。
「起動したよ」
そう言いながら、瞳はまだ目を閉じて月島にしがみついていた。目が切替ると、頭の中に直接大容量の映像が流れ込んでくる。それが上空からの視点で動く相手を追っていくので平衡感覚が狂い、何かに掴まってないといられないのだ。研究所では台の上に寝てから起動していたが、今は月島に抱きついて起動するので、そのまま抱きついていることが多い。
「何が見える?」
「スマホを出した」
「画面読取れる?」
「近付いてみる。歩いてるから、キョロリンがブレないようにしてくれるけど」
だいぶ頭がふらつくのか、月島にしがみつく手に力が入り、息遣いが荒くなる。
瞳が読み取った画面は差出人不明のメールで、リンクだけが貼られていた。中島がリンク先を開くと、そこは会員制の高級SMクラブのサイトだった。
「やだ、何これ」
そう言って瞳は「目」を背けてしまったが、他人に顔を隠して接触できて、情報提供者の接待もできるこの手の場所は密会に適している。もう一度よく見させようとした時には画面は閉じていた。
「ごめん、でも気になったところは、いつでもキョロリンが思い出して見せてくれるから」
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