桜弐号出動

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 衛星の機能についても徐々に理解出来てきた。基本的に静止衛星だが、それは常に瞳を真上から見守る静止状態だった。像を介さなければ探知できない高度なステルス衛星だが、瞳にはわかるらしい。衛星の目が、どこへ行っても、地球の裏側に行っても、自分を真上から見ていることが。その「目」については、その位置から見える範囲なら向きを変えて見回すことができるらしい。しかし、レーザー砲はまっすぐ下、瞳を中心とした狭い範囲に照射することしか出来ないのだという。そもそも自在に撃つ機能が無いのかもしれないが、瞳の性格も影響してると城山は言っていた。  瞳は衛星を「キョロリン」と名付けて可愛がっている。  「私、瞳っていう名前だし、目が大きいから小さい頃キョロちゃんって呼ばれてたんです。何度もシンクロしてると他人に思えなくなって、いつも心の中でキョロリンって呼んでるんです」  この、瞳=目=キョロリンのつながりが見る能力へのシンクロを高めているが、攻撃はまだまだ開発が必要な状態になっているのではないだろうか。       そして一ヶ月が過ぎて生活に慣れてきた頃、月島に桜シリーズの指揮権を持つ特務機関から連絡が入った。内閣総理大臣直属の機関とも言われているが、詳細は不明だ。月島は防衛省に呼び出され、事務次官立会いのもとで命令を伝達された。  月島が家に戻ると、瞳も学校から帰ってきていた。  「お兄ちゃんお帰りなさい」  「瞳、大事な話があるんだ」  二人は家族を装って生活する都合上、こう呼び合っていた。どこで人に聞かれてるかわからないので、二人きりの時でも徹底している。  「桜弐号出動の命令を受けた。明日からしばらく休学だ」  「そう、今週遠足だったんだけど、仕方ないね」  家族と離れて国防に従事する瞳にとって、友達との学校行事は大事なものだっただろう。     
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