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1/2の白饅頭
会場には涙ぐむ者、笑顔を送る者が半々だった。
スクリーンには私の幼少期からの写真が次々と映し出されていく。
いつも私の隣には2つ上の兄が写っていた。
まるで自分が主人公のように常に真ん中で自分の存在をアピールしていた。
そう、私はいつも兄に隠れるように写っていた。
「半分よこせよ!」
兄の声が私の頭に響く。
祝い事には紅白饅頭がつきものだが、甘いものに目がない兄は赤饅頭を食べた後いつも
「半分よこせよ!」
私が食べている白饅頭を口からもぎ取ろうとする。
この時ばかりは兄には従わなかった。
そう、私も甘いものには目がないのだ。
今思えば幼少期の兄はガキ大将だった。
両親を事故で亡くしてから兄は、自分を犠牲にして働いた。
誰にも頼らず私の面倒を見てくれた。
そう子供の頃から私の面倒を見てくれていたのだ。
スクリーンが大学時代の私を映し出す。
その笑顔は眩しいくらい輝いていた。
「綺麗だぞ、良かったな」
兄に喜ばれた事が何より嬉しかった。
兄の方を振り向く。兄の前には半分の白饅頭。
誇らしげな兄の顔が、額縁の中から私に笑いかける。
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