最上の愛

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山田達のグループの4人と先生は、教壇の前でなにやら小さな声で話すと、その後先生を先頭にしてすぐに教室を出て、職員室に行ってしまったのだ。 近くの席にいる女子生徒3人組のグループがひそひそと話をしているのが聞こえた。 「いじめがばれたんちゃったんだって。それで山田君達、呼び出されたみたいだよ。あんなに先生の目気にしてたのにね」 僕は毎日いじめられていた日々から解放されたのだと思った。 僕は荷物をそそくさとまとめて、教室を出た。そして下駄箱に上履きをしまい、靴に履き替えて校門を出る。学校の外に出るとなんだかとても清々しい気分に満たされた。 そして、そんな当たり前のことが嬉しくて涙が出そうだった。 しかし。 しばらく家へ帰ろうと歩いていると、後ろからドタバタと走ってくる足音が聞こえた。その足音と一緒に財布についたチェーンが揺れる音が聞こえる。その足音はこちらにどんどんと近づいてくる。僕はすごく嫌な予感がした。その足音が一歩一歩近づく度に何か恐ろしいものが迫ってくる、そんなような感覚を覚えた。 案の定。その予感は的中した。 あの山田だった。なぜだか周りを見渡しても他の3人の生徒の姿は見当たらなかった。他の3人がいなかったことに僕は一瞬ほっとした。 しかし、僕は山田に左腕をつかまれて、無理矢理脇道に連れていかれた。     
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