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【探して……】
僕の翼を探して下さい!!!
「びぇぇぇぇぇんっ!!!」
横浜出身のかの有名なデュオが路上ライブをしていた、伊勢佐木商店街にて。
石畳の地べたに座り込んで泣いている男を、川鍋智章は見つけた。
年の頃は10代後半と見える、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を隠しもしないで泣いている。
(……えと)
いい歳の男が人目も憚らずに泣きじゃくっている、何か大変な事でもあったのだろうと推測できた。
しかし、それだけに、深入りは、したくない。
無視することに決めて、不自然ではない範囲でなるべく離れたところを歩こうと、足を踏み出す。
「びぇーん、びぇぇぇぇぇん!」
周りの人間も同様の反応だ、自分だけが悪いんじゃない、このまま通り過ぎて……。
「待ってくださぁい!」
突然足を掴まれた、その青年が智章の左脚に縋り付いている。
「ここは、普通、「大丈夫ですか? 僕にできる事はありますか?」じゃないんですかあ!?」
泣き腫らした目で見上げられ、智章は振り払えない。
「えっと……お困りなら、お巡りさん、とか」
なんとか言った。
「その人ならちゃんと助けてくれるんですか?」
「……多分」
いや、むしろ事情だけ聞いて帰らされるだけかな……。
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