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「オラ、起きろや」  人数分ポコポコポコと音がするような気の抜けたキックで地面に転がったチンピラ風味の男達を起こしていく。  ――幻術と言ったり、魔法と言ったりするのだろうか。僕に流れる人間の血は人間のフィルターを通してでしか外界を観測することができない。  悪魔の血が流れているのに、僕はこいつと同じ世界観に立つことができていないのだ。 「満足したから散れ」  チンピラ風味の男達は路地裏から抜けて光の世界に帰って行く。  瞬間。男の全身に流れた悪魔の血が薄れていく。否、退いていくと言った方が正しいか。  Half Dead or Half Alive(半分死んでいて、半分生きている)。  心臓の半分を占めるHalf Deadは眠りに着いて、心臓の半分を占めるHalf Aliveは目を覚ます。  それにはちょっとだけ時間がかかる。  悪魔の血が退いて、人間の血が正常に流れるまでの間。  それは何と形容していいのか分からないが、結果的にはがらんどうになって放っておけば死んでしまう状態にあるのだろう。
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